変異株にも有効だ。変異の多くはウイルス表面の突起状のスパイク蛋白質で起きて、抗体の攻撃を回避しようとする。複数の人工抗体を組み合わせることで、少々の変異があってもウイルスの働きを抑えられる。
イーライリリーの人工抗体も「バムラニビマブ」と「エテセビマブ」の併用療法の緊急使用が米国などで認められている。第3相試験で併用療法試験を行い、早期使用の場合、プラセボ群と比べ重症化を87%抑える効果が認められたという。
関節リウマチの治療薬として使われている同社の「バリシチニブ(経口薬)」も4月23日、コロナ治療薬として適応拡大が厚生労働省に承認された。酸素吸入や人工呼吸器管理、ECMО(体外式膜型人工肺)が必要な重症患者が対象で、レムデシビルとの併用が前提。「バリシチニブ」は、コロナを重症化させる要因の一つ、免疫が暴走するサイトカインストームを抑える効果が期待される。
「サイトカインストームでは、炎症をもたらす複数の物質(炎症性サイトカイン)が体内でつくられる。これまで使われてきたトシリズマブという薬はこのうちインターロイキン6の働きしか抑えられませんでしたが、バリシチニブは複数のサイトカインの働きを止める可能性があり、有望かもしれません」(宮坂医師)
疫病を終息させる福音となるか。(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2021年5月7-14日合併号