それは、彼らが自分のだらしなさを堂々と認めて、それを明るく笑い飛ばしているからだ。そんな彼らのタフでポジティブな生き様が、人々に勇気を与えてくれる。
誰にでも多かれ少なかれダメな部分はある。そのことで他人から白い目で見られたり、厳しく怒られたりして、落ち込んでしまうこともあるだろう。また、真面目な人であればあるほど、失敗することを恐れて、いつもビクビクしながら生きていたりするかもしれない。
一方、クズ芸人たちは決して卑屈にならず、自分の欠点を人前にさらけ出し、それを笑いのネタにする。そこには、開き直りとしか思えない苦しい言い逃れもあれば、一理あると感じられる屁理屈もある。それらすべてに何とも言えない人間臭さがあり、温かみが感じられる。
クズ芸人の生き様は、同じような欠点がある人には安心感を与えるし、真面目な人には肩の力を抜いてリラックスさせる効果がある。
クズ芸人が「芸人っぽい芸人」と言い換えられていることからもわかるように、そもそも芸人とは一般社会でまともに生きていけない人のための職業であると考えられてきた歴史がある。芸人が金や女にだらしがないのは当たり前のことだった。
今でこそ、芸人にも一般人並みの常識や社会性が求められるようになっているが、そんな現代でもアウトサイダーとしての芸人に対する憧れや期待というものは存在する。芸人には型破りな生き方をしていてほしいと潜在的に思っている人は多いのではないか。
もともと同調圧力の強い日本社会は、コロナ禍という未曾有の危機に直面して、ますます息苦しいものになりつつある。クズ芸人と呼ばれる人たちには、この社会を存分にかき回し、風通しを良くしてくれることを期待したい。(お笑い評論家・ラリー遠田)