このときに米国人が食べていたのは、南アフリカの農村の伝統的な食事で、食物繊維が非常に豊富だった。アフリカ人が食べたのは、いわゆるファストフードだ。このことからわかるのは、西洋型の食事を控え、食物繊維をたくさん取ることが大事ということ。記者が取っているのはファストフードばかりだ……。

 自身の腸の状態もきちんと把握したい。長沼さんは腸内環境が乱れているサインとして便を観察することを勧める。

「便通が悪くなったり、便の色がいつもより濃かったりすると乱れているサイン。においもバロメーターになります。特に高齢になると、腸内の腐敗を起こす菌が活発になりやすい。便から強い腐敗臭がしたら要注意です」

 さらに、腹部に指を差し込むように触れたとき、硬く感じるようなら腸の動きが鈍っている証拠。仰向けになって指先でもむなど、マッサージをするだけでも改善は期待できる。また、毎日の食事時間が不規則なことも腸内環境が悪い人に多く見られる傾向だという。

 腸を整えるには、まずは食事を変えることだが、好きなものが食べられなくなってストレスを感じてしまうのなら本末転倒。

「食事を変えても、真面目な人ほどこうしなくては、と力が入りすぎて思うように効果が得られないことが多い。緊張を緩めることも腸には大事」(長沼さん)

 そこでおすすめなのが、毎日3分ほどの深呼吸。同協会でヨガ講師を務める中村友香さんは言う。

「自律神経の副交感神経が優位に働くとき、つまりリラックスできているときに腸は動きます。座骨を立てて腰をまっすぐ伸ばし、鼻から息を吸う。深呼吸は副交感神経の働きを高めるので、腸の動きを促します。慌ただしい時間と切り離して、じっくりやる習慣を身につけてほしいです」

 ストレス社会に身を置くと、普段から呼吸を意識することはないだろう。食事と呼吸。いかに腸をいじめていたかを思い知らされた。心の平穏のためにも腸をいたわりたい。(本誌・秦正理)

週刊朝日  2021年5月7-14日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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