健康でありたいと願うのは人の常。心身の状態を維持しようとするとき、まず何を考えるだろうか。規則正しい生活や日ごろからの運動も大事だ。ただ、いの一番に考えたいのは“腸”。脳とは互いに深く関係し、うつ病や不眠症、がんリスクにも関わるという。“腸脳力”について考えてみよう。
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“腸脳力”という言葉をご存じだろうか。日ごろから細やかに健康に気を使っている人ならば聞いたことがあるかもしれない。いかに腸内環境に気を配るか。それこそが脳に好影響を与え、病知らずの心と体を手に入れる秘訣なのだという。
記者は30代後半。ここ数年、お通じの状態はよろしくない。丸一日排便がないことはざらで、便秘気味である。
昨今、「腸活」という言葉がよく聞かれる。健康な体を手に入れるため、腸内環境を整えようとする活動のことだ。腸には何がいいのかと調べてみたところ、見慣れない字面にたどり着いた。
「腸脳相関」──。
腸の状態と脳の状態がお互いに影響を与え合うのだという。便秘は腸の調子だけが悪いのだろうと想像していたが、ひいては心と体全体の健康につながっていくのか。
『細胞から元気になる食事』などの著書がある杏林予防医学研究所所長の山田豊文さんは力強く断言する。
「人間の健康をつかさどっているのは腸です。腸がすべてのカギを握っていると言っても過言ではありません」
さらに、脳との相関関係についても解説する。
「現代人はうつ病や不眠症など脳や心のトラブルに陥る人が非常に多いですが、これには腸内細菌が関係していることが示唆されています」
腸と脳を能動的に整えることが健康への近道と説き、『腸脳力』の著書があるセルフメンテナンス協会の長沼敬憲さんもこう話す。
「相談に来られる方は便秘に悩まれていることが多いですが、原因はメンタルにあることが少なくありません。ストレスで体が凝り固まっていると腸の動きは鈍ります」
たしかに記者もコロナ禍での慣れない在宅勤務が続き、ストレス過多だ。長沼さんによると、便秘もストレスも、幸福物質とも呼ばれる神経伝達物質セロトニンの分泌と関係があるようだ。