次に、クローゼットの中の衣類や小物、本に手紙など、こまごまとしたものが待っている。

 Rinさんは、スマホで写真を撮って娘に送りつつ、メールや電話なども併用しながら根気強く仕分けをしていった。

「あそこのアレが」とか「それじゃなくてそっち」とか、言葉だけで説明すると、らちが明かなくても、写真一枚で解決することもある。

「そもそも本当に大事なもの、思い入れの強いものは、すでに持ち出しているはず。実家に置いてあるものは、見てしまうとその当時のことを思い出したりして、『やっぱりいる』となりがちですが、それは決断できずにとりあえず置いたままだったものがほとんどです」

 最終的にRinさんは、娘の荷物を段ボール2箱にまとめられたという。

「『思い出ボックス』みたいな感覚ですね。娘の家だってスペースがないのはわかっていますから、この2箱をいつかのために預かっておいてあげるということにしました」

 中里さんも同様に写メや、テレビ電話など動画での通話で相談しての作業をすすめる。「帰省しづらい今だからこそ、余計に『これはどう?』と逐一聞くことが信頼関係にもつながります」

 自分の荷物の始末で親の手を煩わせたくないと思う人は多い。「そのためにも、選択権、決定権は基本的に子どもに渡す。そうしていくうちに、子どもの側も、置いてある荷物への気持ちに変化が出てくると思います」

 なかには、子どもの荷物を片づけることで、喪失感をおぼえる人もいるかもしれない。

「今そこに暮らしている人が、その家の主人公ですから、主人公がそのままでいいというのなら、それでいいと思います。将来子どもに迷惑をかけないためではなくて、自分がやりたいことのために、いま片づけるという思いを明確にしてください」(中里さん)

 ふたたび実家に思いをはせるうち、10代のころ隠したままのエロ本の存在を思い出した! この先、親が片づけを希望したとき、写メやテレビ電話で相談しながらも、そこだけはうまく隠して、後日人知れず処分しよう。(本誌・太田サトル)

週刊朝日  2021年5月7-14日合併号

暮らしとモノ班 for promotion
賃貸住宅でも大丈夫!?憧れの”壁掛け棚”を自分の部屋につけてみた