栄一は決してお金儲けを否定していませんでした。むしろ、その意欲を持つことは重要だと考えた。ただ、稼ぎの手段を選ばず、儲けを独り占めしてしまい、大多数の人々を不幸に陥れてしまっては、結果的に自分自身のウェルビーングにもつながらないということを唱えていたのです。
そのウェルビーングが「継続」することが大事。つまり、栄一が「論語と算盤」のなかで最も言いたかったことを今の時代の文脈で表現すれば、それは「持続可能性=サスティナビリティ」です。
まさに、SDGsの最初の「S」の部分です。そして渋沢栄一のライフワークとは、よりよい社会を築くこと、「D」(開発)であり、それがG(目標)だったのです。(渋沢 健)
◆しぶさわ・けん シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役、コモンズ投信株式会社取締役会長。経済同友会幹事、UNDP SDG Impact 企画運営委員会委員、東京大学総長室アドバイザー、成蹊大学客員教授、等。渋沢栄一の玄孫。幼少期から大学卒業まで米国育ち、40歳に独立したときに栄一の思想と出会う。