「お疲れ~って会社を出て、すぐ電車に乗るのが寂しくて」、誘い合うように飲みに来たという。
渋谷センター街は、緊急事態宣言前に多かったコンビニ周辺で立ち飲みする人々も消え、閑散とした様子。歩き回ってやっと見つけたのは、コンビニ横で一人で缶ビールをイッキ飲みする30代男性会社員だった。
「仕事終わりに、ビールとラーメン、餃子が俺の定番。酒を出してくれないから、先にここでビールだけ飲んでから食べに行きます」
街では居酒屋の呼び込みが客引きに必死。手にした店のプラカードには「生ビール、ハイボール1杯目150円」とある。どうやら酒を飲ませる店もあるようだ。
サラリーマンの聖地・新橋。SL広場前では警備員たちがマイクで帰宅を促す。外飲みスポットだった桜田公園にも警備員が数人いて、柵が張られ立ち入り禁止。当てが外れて“歩き飲み”していた中年2人組。
「しょうがねえな。今日は帰って女房と家飲みだ」
「飲ませてくれるかね」
「さあな。初めてのことだからな。ハッハッハ」
ギャングが暗躍したアメリカの禁酒法時代とはまったく違う、小さな“掟破り”が各所で展開されているようだ。(本誌・鈴木裕也)
※週刊朝日 2021年5月21日号