俳優・小栗旬がハリウッド映画デビューを果たした。米国の撮影現場で印象的だったことと、逆に見えてきた日本の現場のよさを語った。AERA 2021年5月17日号から。
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俳優の小栗旬が映画「ゴジラvsコング」でハリウッドデビューを果たした。私たちが知る小栗旬でありながら、どこか新鮮な小栗旬がそこにはいた。
小栗旬(以下、小栗):もともと、レジェンダリー・ピクチャーズというアメリカの映画製作会社が「ゴジラvsコング」を製作するにあたり、日本人キャストについて東宝さんに相談していたみたいなんです。東宝さんが僕の名前を挙げてくれたことから、直接オファーを頂いたのですが、最初は自分の言語力では参加することは難しい、と伝えていて。話し合いを続けるなか、3年ほど前に別のプロジェクトでロサンゼルスにいるときに、レジェンダリーのスタッフから「せっかくなら会ってみないか」という話になり、会って話をするうちに「一緒にやろう」と。
英語は、撮影に入る約半年前から特訓をしました。普段使い慣れていない言語で仕事をするって、やはり難しいことです。現場ではみんな気さくに話しかけてくれましたが、最初の頃は半分くらい何を言っているのかわからなかった。なかなかしんどかったです。カットされたシーンもありますし、悔しい思いはたくさんしましたね。
■「サーモン」と何百回も
——いまも忘れられないほど、悔しかったことはなにか。そう尋ねると、思いがけない答えが返ってきた。
小栗:撮影が終わってから、いわゆるアフレコを行ったのですが、最後の最後までずーっと、「サーモン」という発音ができなくて。「ネイティブな人間が聞くと、『サーモン』という単語には聞こえない」と。そうしたちょっとした音の違いは、自分ではわからないですし、いったい何がダメなのか、途中から僕自身わからなくなっていった。感覚としては、「サーモン」って何百回も言ったんじゃないかな(笑)。
もしこの先も違う言語の作品に参加する機会があるのだとしたら、こうした問題は一生つきまとうのだと思います。もしくは、自分のイントネーションのなかで、相手に伝わる発音を探っていかなければいけない。ネイティブでもなければ、英語を使い慣れていたわけでもないので、“聞こえる音”にしていくのはなかなか難しいことなんですね。