兵庫県明石市の泉房穂市長はこう語る。
「兵庫県副知事が国からせっつかれているようです。周辺の自治体と意見交換しても、本音では大半の市長、町長は7月末までは難しいと言っている。ワクチンの打ち手を確保するために看護師、歯科医に頼めと国は言いますが、地元の医師会がOKしないと動けない。この説得で困っている。スムーズにいくよう国が調整するべきです。明石市に4月中に届いたワクチンはたった2箱(1000人分)です。高齢者は8万3千人いるのに。菅首相は7月末に高齢者ワクチン接種を完了せよと言いながら、ワクチン確保をきちんとできていない。ほんまに不誠実ですわ。どうしもて終わらせろと言うなら、まず、ごめんなさいと謝れと言いたいです」
明石市は繁華街にも集団接種会場を確保するなどして7月末までに高齢者接種は終える予定だという。
しかし、7月末までに難しいと回答した九州地方の市長は匿名でこう語る。
「医師会が『開業医は忙しい』と言うので、看護師、歯科医師にお願いしろと国は言いますが、勝手にやったら、次の選挙で落選ですよ。地方は医師会様なんです。国はわかっていながら、調整せずに自治体に押し付けている。本当におかしい。うちは打ち手不足で7月末どころか、8月末も難しいかもしれない。できないと自治体の名前を公表するぞと国が脅してきましたが、ワクチンを予定通り送って来ないのに、あまりに理不尽です」
ある四国地方の首長もこう怒る。
「総務省から毎日、電話、メールが山のように来ました。状況を聞いて、2時間後にどうなったと質問されたりします。そもそも国がワクチン確保をできていないからこうなったんでしょう。それなのにも、県がしっかりやらないから市町村が困っているみたいなロジックで責任を押し付けてくる。国や総務省のそんな態度は本当の腹が立つ。あなたたちに責任やないのか、それをほおっかむりして、何を言うんだと言い返したいです」
ワクチン接種を巡る騒動は当面、収まりそうにない。
(今西憲之、AERAdot.取材班)