菅首相の頭は高齢者へのワクチン接種を7月末に終えること、東京五輪を成功させること、衆院解散に打って出て勝つこと―ー。このシナリオしかない、と前出の自民党幹部は言う。

「ダメなら辞させられるともう必死。周囲もマイナスの話は絶対入れないから、菅首相は自信たっぷりだ。怖いのは、猛威を振い、先が読めないコロナと菅首相を揺さぶり、何をしでかすかわからない小池さん。菅首相に近い国会議員が『小池爆弾が…』と言ったら、そうだと応じていた」

 全国で新型コロナウイルスの9割以上が重症化しやすいとされるN501Y型の変異株に置き換わった――。こんな推計を国立感染症研究所が政府に報告した。変異株は東京などの首都圏で90%を超え、大阪、兵庫、京都ではほぼ100%に達しているという。

 ここ数日は新規感染者数が1000人以下になっているが、大阪の「医療崩壊」はいまだに続いている。死者数は5月11日に過去最多の55人、12日には50人と激増し、5月は13日現在、月間の死者は412人に達し、すでに最多を更新している。大阪府内で中等症までの患者の治療にあたっている病院の看護師は、こう悲惨な状況を話す。

「うちの病院で4月末と5月はじめと亡くなった患者さんがいます。どちらも高齢者ではなく、50代です。一人の方は軽い中等症だったが、入院して1日で急激に悪化。重症病棟への転移が必要となった。しかし、どこも空きがない。うちで重症者の治療にあたった経験がほとんどなかった。医師の指導で、薬を投与や人工呼吸器を装着しました。しかし、肺は真っ白で、肺炎は悪くなるばかり。本当ならエクモの装着が必要ですが、ない。手配している間にお亡くなりになった。コロナがすぐに収束しないことはわかっていたはず。国や大阪府は何をやっていたのか」

 大阪府では「入院フォローアップセンター」で入院や転院を調整している。そこに問い合わせがあると、実際に対応にあたるのは、保健所だ。保健師の一人は打ち明ける。

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医療崩壊が続く大阪の惨状