■制御「失敗」の繰り返し

――緊急事態宣言は延長されたが、イベントや舞台の有観客開催など、緩和された対策もある。

 場当たり的な対策を出しては、少しでも新規感染者数が減る傾向が見えると、すぐに経済を回すといって対策を緩める。何を焦っているのかわかりませんが、結局、日本はこの1年、その繰り返しで、感染制御に失敗し続けてきました。

 欧米がロックダウンを行った際は、日本の緊急事態宣言とは比較にならないほど厳しく人の動きや経済活動を制限しました。けれども、経済的には破綻していません。そうした現実に目を向けた上で対策を取るべきです。

――緊急事態宣言自体の効果が薄れる背景には、国民の自粛疲れも指摘されている。

 これは、政府の国民へのメッセージが明確ではないからでしょう。約100年前の「スペイン風邪(インフルエンザ)」は収束に約3年かかりました。現代は当時よりも医療が発展し、ワクチンも開発されましたが、一方で、グローバル化による人の流れは当時とは比べものになりません。ですから、新型コロナウイルスの収束にも、最低でも2年はかかるだろうというのが世界の常識です。

 ところが、新型コロナウイルスとの闘いは長期戦であるということを、日本政府は一度もきちんと国民に説明していません。政府としてどのように対応していくのかの長期的ビジョンも示していません。そうしたメッセージやビジョンがあれば、国民も「まだ1年しか経過していないからあと1年ぐらいは続く」と理解して、行動できます。メッセージもビジョンも示されないまま、場当たり的な対応をしていたのでは、国民がコロナ対策に疲れてしまうのも当然です。

――政府が五輪開催を前提にしているために、「長期戦」とは言えなかったのではないだろう。

「長期戦」=「五輪開催はできない」ということではないはずです。根拠も示さずに「開催します」と繰り返すより、むしろ、「五輪開催のために、2カ月間は徹底的に厳しい対策をとります」と宣言した上で、厳しい措置を全国的にとれば、国民も納得して協力すると思いますよ。

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