こうした事態に対応できるよう、国民が病院の集約化を望むなら、それは一つの選択肢でしょう。しかし、医療へのフリーアクセスはなくなります。医療体制の変更には議論も時間も必要ですから、新型コロナウイルス対応は、今ある医療資源でやるしかありません。
入院できず、ホテルや自宅で待機せざるを得ない。いま、関西の医療現場が直面している状況は、東京がすでに第3波で経験したことです。かつての教訓から、都内では、自宅療養中の感染者が、24時間、医師と連絡を取れる仕組みを整えました。また、病床が足りなくなる一因は、急性期を脱して感染させる危険性はなくなっても、体調が回復しないために入院している患者がいるからです。このため、回復期の患者が転院できるよう、中小の民間病院200カ所に約1千床を確保しました。
1日に数千人規模の新規感染者が出る感染爆発状態になれば、医療の限界はきます。けれども、今の医療資源でも感染爆発が起きなければ、急性期と慢性期の病院の連携などを工夫することで地域での医療崩壊を防ぐことはできるはずです。
(構成/科学ジャーナリスト・大岩ゆり)
※AERA 2021年5月24日号