プロスポーツは若い選手の独壇場と考えられていたが、どっこい最近は、不惑を超えた40代の熟年選手の活躍が目立つ。
強烈なモチベーションに支えられているのが、来年のソチ五輪を狙っているスピードスケートの岡崎朋美選手。五輪5大会に出場している41歳の岡崎は1児の母でもある。
「スケート界で誰も歩んだことのない道を切り開いていくことに、面白さを感じています」
そして、こうも言う。
「年齢を重ねるごとに、自分の身体がどうなっていくのか、あるいは出産を経た女性の身体はどう変わるのか、自分を実験台にして研究してみたい」
だが、2歳児を育てながら現役を続けるのは、前例がないだけに厳しい環境に置かれている。試合のたびに、大阪に住む夫の母や北海道の実家の母の手を借りなければならず、その交通費も自前だ。それでも、けもの道を切り開く矜持は、決して萎えることがない。
「誰かがやらないとその環境の不備も口にできないじゃないですか。それらも私が現役を続ける理由です。でも一番は、ソチ五輪で私が滑る姿を娘に見せたいんですよね」
岡崎のような母親アスリートは日本ではまだ稀だが、環境が整備された海外では少なからず存在し、活躍もしている。ママさん選手の方が力を発揮する可能性が高いと断言するのは、参議院議員の橋本聖子さんだ。
「母親になると、トレーニングの苦しさやライバルとの葛藤なんて、とても小さなことに思えてくる。競技に集中するその濃さが、独身時代とは比べ物にならない」
※AERA 2013年6月10日号