なお、児童・生徒らの五輪観戦は、学習指導要領の「特別活動」の「学校行事」のくくりとして扱われる。遠足や修学旅行といった学校行事と同じように、参加がなければ「欠席扱い」になってしまうのか。
「コロナに対する不安から、観戦を控えたい生徒さんもいると思います。彼らが不利益を被らないよう、各校の校長の裁量で何らかの配慮をしてもらうよう、通達しました。例えば、課題学習に取り組むことで出席扱いにするなどです」(都教委の担当者)
観戦計画に対する思いについて、担当者はこう話す。
「目の前でトップアスリートの活躍が繰り広げられたら、子どもは心の中に人生の糧となるような、かけがえのないレガシーを残せるのではないか。ただ、感染状況によって安心安全の確保ができない場合は、当日キャンセルも可能にするなど準備を進めています。子どもたちの安心安全は十分に配慮したいです」
せっかくの日本開催。見せてあげたいという気持ちもわからないでもないが、冒頭の保護者は、今は不安の気持ちが勝るという。
「安全な環境のもとでならいいと思いますが、感染が広がった今はそんな状況ではない。真夏ですし、マスクを付けながらでは熱中症も心配。子どもはあまり症状が出ないですし、無症状のまま家庭に持ち帰って感染を広げないかといった不安もあります」
子どもの気持ちも、すっかり冷めているという。
「もともとスポーツが好きで、コロナ前はパラ競技を体験して楽しむなど盛り上がっていましたが、今は『見に行きたくない』と口にしています。小5なので、ニュースを見て感染状況もわかっていますし、意外と冷静です。本人が行きたくないと言えば、たとえ欠席扱いになってもその気持ちを汲んであげたい」
子どもを預かる立場の学校の教員らの本音はどうか。先の男性教諭が職員室の温度を明かす。
「乗り気な人など誰もいません。正直言って負担です。授業の学習形態や(検温や消毒など)生活様式も変わったので、指導することも増えていますし、神経も使います。どんなに対策をしても、かかるときはかかる。五輪観戦で感染したとなった時に学校のせいにならないか。一体だれが責任を取るのでしょうか」
万が一の場合、心のレガシーどころではないはずだ。状況に応じた冷静な判断が求められている。(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)