小学2年の子どもの保護者の江戸川区の30代男性は、「中止が妥当だと思っていた。こんな状況で生徒を連れていくことが驚き」と話す。学校行事のスケジュールによると、娘が8月のパラリンピック競技を観戦予定だが、できれば参加させたくないという。
「100人単位の子どもを感染リスクから守りつつ連れていくには、無理があると思います。実は娘は喘息持ちで、これまでも電車移動は避け、遠出も控えていました」
こうした保護者らの不安をよそに、都は計画の遂行に向けて動いている。都は昨年12月、参加を希望していた学校(児童生徒数およそ81万人)に対して、新たな日程を示した通知(「東京2020大会における子どもの競技観戦にかかる配券・割当案について」)を出した。コロナ前と変わりなく、生徒らの移動は、電車などの公共交通機関を使うという。
さらに、4月から今月にかけて教員らを集め、緊急事態宣言下で「会場の下見」を行っていた。校外学習に出かける場合は「実地踏査」という下見が必要だからだ。都は参加人数を明かさなかったが、教員らに配られた案内資料によれば、5月10~11日に行われた国立競技場の下見だけでも約770人の教員が参加予定となっていた。
都は感染対策を講じていたと主張する。
「今回は各校1人までとし、任意での参加。それでも数が多いので、午前・午後に分け、さらに小グループに分けて、密にならないよう感染対策をしたうえで行っています。参加しない人には動画で確認・下見できるように用意しています」(都教委・指導企画課の担当者)
実際に国立競技場での下見に参加した練馬区の小学校に勤める30代の男性教諭に、当日の話を聞いた。この男性教諭が行動を共にした“小グループ”は40人ほど。組織委の担当者を先頭に、並んでトイレや出入り口を確認していったという。
この日は大人が気を付けていたので密にはならなかったというが、会場の下見をする中で、観戦当日に子どもたちが適切な距離が保てるのかどうか、不安を感じたという。