おそらく、精神疾患が若い世代で発症しやすいことを知っている人はほとんどいないのではないでしょうか。だから議題に上がることもなかったのだと思います。
――親世代も精神疾患のことをあまりわかっていないということですね。
そう思います。学生時代も社会人になっても、精神疾患についてきちんと学ぶ機会はなかなかありませんからね。
でも親にきちんとした知識がないと、「えたいのしれない病気」「怖い病気」などと偏見や誤解を助長してしまうだけでなく、早期発見・早期治療で回復しやすい病気なのにその機会を逃してしまうように思います。
たとえば、親は精神疾患の知識がなかったとしても、子どもが調子悪そうにしていることに気づくことはできると思うんですね。その時点で精神疾患と結びつけることはできなくても、具合が悪いならとにかく病院で診てもらおうということになれば早期発見・早期治療につながる可能性は高くなります。
ただ高校生ともなると、なぜ病院に行かなければならないのか、本人が納得しないと連れていくのは難しい。骨折しているとか熱があるとかどこか痛いとか、明らかな症状があれば受診する気にもなるでしょうが、精神疾患の場合は眠れないとか、だるいとか、わかりにくい症状も多いので「疲れているだけだから」などと拒否されてしまうことも大いにあり得ます。
親に精神疾患の知識があれば「うつ病でもそういう症状が出るみたいだよ」「精神疾患って高校生にもけっこう多いから、診てもらったほうがいいかもしれないね」「早く治療すれば治りやすいから、病院に行ってみれば」などと具体的な声掛けをすることができますよね。子どもも納得して、「じゃあ、行ってみる」と気軽に応じてくれるのではないかと思います。
――親だけでなく、子どもにも精神疾患の知識があれば、さらに早期発見・早期治療につながりやすくなりますね。
そうですね。それに子どもは具合が悪くても体力があると頑張ってしまうところがあります。病気かもしれないという自覚があれば、無理を重ねることなくだれかに相談するという行動をとりやすくなるかもしれません。子ども自身が「こういう症状のときは病気の可能性がある」と知っているだけでも、自分を守ることにつながると思います。