「コンビニ百里の道をゆく」は、51歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
【写真】長崎県五島市にオープンした「ローソン・ポプラ」の店舗
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長崎県の五島市と新上五島町に今年4月、三つの店舗をオープンしました。同県の離島地域では初めてで、以前より事業展開している「ローソン・ポプラ」の店舗です。最終的には、ローソンだけの看板のお店も含め計8店舗を計画しています。こういった離島や地方への出店、実は私たちローソンの理想を体現している面もあると考えています。
2015年から17年にかけて、北海道の中標津に計4店舗をオープンしたときにも感じたのですが、地方では流行のものも、なかなか買えないことがあります。
でも、ローソンができたおかげで、ゴディバとタイアップしたスイーツや、まい泉とコラボしたお弁当が、札幌まで行かなくても買える。とても喜んでいただけるんです。
一方、地方の名産品など、その店舗ならではの商品もあります。たとえば網走の店舗なら地元の名産品がローソンの棚に並んでいたりする。つまり、ローカライズと、平準化。地域に根差した地産地消型の親しみや温かさと、全国チェーンの醍醐味。その両方を兼ね備えた取り組みはローソンの理想でもあるし、お客様が求められていることだと感じています。
また、離島や地方は高齢者のお客様がとても多いことも特徴です。クルーさんに聞くと、例えばあるおじいさんは朝早くこられて、「朝勤」のクルーさんと少し話をして新聞やコーヒーを買われていく。昼すぎには「昼勤」の人と少し話して、夕方すぎにまた来られて、「おやすみなさい」と言って帰られますよ、と。
コンビニを無意識のうちに心のよりどころにしていただいたり、ちょっとした親しみや温かさも感じていただけたり。そしてたまにお買い物も(笑)。
「物販だけではない、お店の役割」。そんなことも、離島や地方への出店においては再認識できると感じています。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長