「そもそもリコールの成立に必要な署名数に達していないのに調べるほうがおかしい」「成立していないのだから、署名はただのメモのようなものだ。偽造という指摘はおかしい」「逮捕されても最高裁まで闘う」
つまり、悪いことをしたという意識がまるでないのである。
大村知事は田中容疑者らが逮捕されたことを受けて、記者団の取材に応じ、「犯罪行為そのもので、日本の民主主義を壊す暴挙だ」と怒りをあらわにした。
「誰が何の目的でどのようにしてやったのか。お金がどこから出たのか。捜査当局には全容解明と関係者の厳正な処断をお願いしたい」と強調した。
リコール運動団体会長の高須氏は取材に対して、「まったく知らなかった」と答え、大村知事に「首謀者」と指摘された河村市長は、「運動を支持した人間がなぜ事件の首謀者なのか。国語の勉強をしてこい」と強く反発した。
だが、高須氏や河村市長の主張を信用する人間はほとんどいないのではないか。
それにしても、河村氏を市長に当選させた名古屋市民は、この事件をどのように捉えているのだろうか。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2021年6月4日号