なにより知香さんの登山ライフは格段に充実した。朝ゆっくり起きて近くの山に登り、明るいうちに帰宅する。「都心だと帰るころには夜になっていて、片づけて洗濯したら、もう深夜。体をケアする時間がないまま、翌日の仕事の準備をすることもあったので、くたくたで。山が仕事なのにプライベートで登ることは少なかった。初心者の大輔さんと一緒に登ろうと思います」

 2人のように、都心を捨てて近郊の街に住み替える動きが加速している。

 総務省の人口移動報告によると、2020年に東京23区から転出した人は前年より約2万1千人増えた。地図では23区からの移住者が増えた近郊の自治体を並べた。とりわけ、東京西部や湘南エリアの人気が高いことがわかる。不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の協力を得て、平均的な家賃や物件価格を載せているので、参考にしてほしい。

 パーソルグループの「ミイダス」が昨年10月に公表した調査によると、東京・大阪・愛知の3都府県に住む就業者500人のうち、33.4%が「移住を計画・準備している」「検討している」「興味がある」と答えた。3都府県だけでも1600万人以上が働いており、多くの人が移住に関心を持っていることがわかる。

 グローバル都市不動産研究所によると、都内の30代の人口は、19年に約4千人の転入超過だったが、20年は1万人の転出超過に転じた。40代は19年に1千人の転入超過だったのが、20年は6千人の転出超過になった。身軽な30~40代が動いていると考えられる。(ライター・井上有紀子)

AERA 2021年5月31日号より抜粋

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