一方、ユダヤ人とパレスチナ人の中にも互いに隣り合って平和に暮らしたいと考えている人たちがいます。彼らは午前中に仕事に行き、暴力のない安全な生活を送り、子どもたちのためにより良い未来を望む人々です。不幸なことに彼らは過激派と彼らの粗野な政治家によって度重なる紛争に引きずり込まれています。
私の意見では、ユダヤ人とパレスチナ人の大半はお互いが隣り合って平和に暮らすことを望んでいます。そのために最も重要なことは、相互の出会いの場をつくることです。これらの出会いの場はお互いについて知り、教え合い、将来の信頼を築くことでしょう。幸いなことに、そのような出会いは、特に教育、経済、スポーツの分野ですでに始まっています。
アラブ人とユダヤ人が出会う最も重要な場所は教育現場です。今までは多くのユダヤ人とアラブ人の若者は別々の学校で勉強していました。なぜならユダヤ人の子どもたちにはヘブライ語で教え、アラブ人の子どもたちにはアラビア語で教えるからです。しかし同時に、最近はイスラエルの一部の都市で、ユダヤ人とアラブ人が一緒に勉強している混合学校ができ始めています。私の2人の子どもたち(14歳と10歳)も、ユダヤ人とアラブ人が一緒に勉強し合い、お互いを知り合い、友情を形成する「ハンド・イン・ハンド」と呼ばれるエルサレムのヘブライ語・アラビア語のバイリンガル学校に行っています。私はそのような学校が近い将来もっと増えると思います。
ユダヤ人とアラブ人が定期的に出会うもう一つの場所は大学です。 私が教えているエルサレムの国立ヘブライ大学では、毎年アラブ人学生が増えています。日本学科でさえもアラブ人の学生が少しずつ増えてきました。現在、大学全体の学生の約15%がアラブ人です。大学では、アラビア語や外国語を母語とする学生に対して、学部前に特別な準備コースを提供しており、アラビア語が母語の学生にもコースへの登録を奨励しています。このプログラムが成功すれば、将来イスラエルの大学内のパレスチナ人学生の数はさらに増えるでしょう。
Nissim Otmazgin
イスラエル・ヘブライ大学教授が語る、戦時下の学部長の深い悩み