冷静に世の中を見据える視点にも定評があり、ワイドショーのご意見番やコラム執筆でも活躍中の壇蜜さん。作家・林真理子さんとの対談は、ジェンダー問題、コロナ禍の世界、そして子育てトークと、話はどんどん広がって──。
【壇蜜が初の客室乗務員役に「夜に強要されたことはあります」】より続く
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林:壇蜜さん、「コロナでほとんど引きこもりの自粛生活です」とインタビューか何かでおっしゃってたけど、週刊誌のエッセーとか書くお仕事もいっぱいあるし、もともとおうちにいることが多いんじゃないですか。
壇蜜:家にいることが増えました。外に出てのびのび仕事をするとか、書きもののためにカフェに行くとかしないタイプなので。
林:でも、外のお仕事もそろそろ忙しくなり始めたでしょう。今こうやって外に出て対談とかインタビューの取材を受けていると、外に出てお仕事するのも楽しいな、という心境ですか。
壇蜜:逆にあまりこだわっちゃいけないなと思うようになりました。どっちのほうが楽しいってこだわる人が、こういう緊急事態のときにいちばん滅入っちゃうんだろうなって。どっちかにこだわっちゃうと、何かあったときに滅入るのは自分だなということに気づきました。
林:そのバランスが難しいですよね。自粛のあいだに世の中がギスギスし始めて、壇蜜さん、どんなふうにそれをごらんになってるかなって、壇蜜さんのコラムを読みながら思ってました。
壇蜜:行動が制限されるとか、見えないものにイラつくという世界がいま続いてますよね。「正しく恐れろ」なんて言われても、正しさ自体がわからないわけですから、文句を言ったり傷つけてくる人たちをかわすには、「負けるが勝ち」の精神で、“負ける技術”が必要なのかなって最近思うようになりましたね。
林:負ける技術って、うまくかわすということ?
壇蜜:そうですね。何か文句を言われたら、「いやいや、本当にそのとおり。申し訳ない」って先に言ってしまう。目の前で燃えている火を、自分が持ってるバケツにどれぐらい水が入ってるかもわからないのに消そうと意気込むなんて、今はやらないほうがいいかもしれない。