菅義偉首相 (c)朝日新聞社
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 他国より大幅に遅れたものの、ようやく進みつつある新型コロナウイルスのワクチン接種。笑顔で外に繰り出す海外の人々を見て、「やっとマスクとおさらばできる」と期待している人も多いのではないか。だが、事はそう簡単ではない。日常を取り戻すには、今しばらく我慢が必要なようだ。

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 新型コロナウイルス感染症対策の切り札として期待されるワクチン。すでに1回目を打ち終わり、

「新型コロナワクチンを打ったから、もう安心」「マスクを外して、友人と昼からカラオケへ直行したい!」

 などと考えている読者もいるかもしれないが、ちょっと待ってほしい。ここでの油断が、命取りになりかねないのだ。専門家は「ワクチンを接種しても、油断は禁物。とくに1回目の接種を終えた後は気を付けたほうがいい」と忠告する。

 このワクチンは2回接種が基本。ファイザー社のものは3週間後、モデルナ社のものは4週間後に2回目を接種することが推奨されている。一般的に、ワクチンを接種してから、ウイルスの感染を防ぐ中和抗体ができるまでには、少しタイムラグがある。大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授の宮坂昌之さんが、最新の和歌山の調査結果を紹介する。

「1回目のワクチン接種を終えた70人の中和抗体の状態をみたところ、打ってから10日目まではあまり値が上がっていませんでした。11日目以降も抗体値がすごく上がった人は全体の4分の1ぐらいで、残りは結構ギリギリのライン。ウイルスの曝露量によっては感染する可能性があります」

 つまり、1回目の接種直後は、まだ十分な免疫がついていない可能性があるというわけだ。

「ですので、2回目を打つまでは今までと同じように、不要不急の外出を避ける、マスク着用、ソーシャルディスタンス、手指消毒といった感染対策を継続することが必要です」(宮坂さん)

 では、2回目の接種を終えた場合はどうか。

 アメリカの感染対策を担うCDC(疾病対策センター)は5月13日、「2回のワクチン接種を済ませて2週間経過すれば、マスクの着用やソーシャルディスタンスをとることなく、活動を再開できる」という指針を発表した。実際、マスクなしで生活する人たちの姿も報道されている。ワクチン接種先進国のイスラエルも、政府が屋外でのマスク着用を義務づけた規制を解除した。ちなみに、アメリカのワクチン接種率は約4割、イスラエルは約6割。

「一般的に集団の6割程度がワクチン接種を終えると集団免疫が獲得できるとされていますが、コロナの場合はまだわかっていません。したがって、私にはアメリカが集団免疫を獲得しているとは思えません」

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