宮坂さんはこう話した上で、CDCがマスクなしOKとしたのは、ワクチン接種率を上げるための“インセンティブ”ではないかとみている。要は、「ワクチン接種を終えたらこんな生活が待っているので、みんな打ちましょう」というプロモーションだというのだ。

 では、本当に2回接種後は安全なのか。ワクチン承認のために実施された臨床試験でわかっている有効率は、ファイザー社が95%、モデルナ社が94%、アストラゼネカ社が90%。感染症に詳しいナビタスクリニック理事長で医師の久住英二さんはこう話す。

「コロナワクチンは非常に有効で、2回打ち終わった後に感染する“ブレークスルー感染”の確率は極めて低い。しかもこのワクチンは感染を予防するだけでなく、発症予防や重症化予防も認められています」

 しかし、100%感染しないわけではない。

「ワクチンは鎧(よろい)のようなものです。どんなに頑丈な鎧でも弱点があって、そこに矢が刺さればケガをしたり命を落としたりします。特に今は変異株という強力な矢ができてきたので、鎧を身につけているから安心ではなく、確実な感染対策は取り続けたほうがいい」

 実際、米ロックフェラー大学は、ファイザー社かモデルナ社のワクチンを2回接種した417人のうち、2人が新型コロナに感染したと報告した。2人とも変異株だ。

 もちろん、ワクチンは変異株に対しても、ある程度は有効であることは確かだ。最新の報告では、ファイザー社のワクチンの有効性は英国型変異株で93%、インド型変異株で88%、アストラゼネカ社では同66%、60%と判明。「数字が少し下がったが、有効率は高いといえる」と宮坂さんは言う。

 それにしても、国民全体へのワクチン接種はいったい、いつ終わるのだろうか。久住さんは言う。

「供給量にもよりますが、年内いっぱいかかるのでは。しかも秋口からはインフルエンザワクチンの接種も始まるため、混乱が起こってさらにコロナのワクチン接種が遅れる可能性もあります。海外ではインフルとコロナの同時接種を推奨している国もありますが、日本はどうなるかわかりません」

 いずれにせよ、2回のワクチン接種が終わったからといって安心せず、感染対策は続けていこう。

「国民の多くがワクチン接種を終え、かつ感染者数が1ケタあるいはゼロの日が来るまでは、マスクをしたほうが安全ですね」(宮坂さん)

(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2021年6月11日号