尾野:私はあすみが別の母親から、「あんたの子はサイコパスだ」と言われるシーンが衝撃でした。必死に「うちの子はいい子」と思い込もうとしていたのに、他人からの指摘で母親自身が「そうかも」と思ってしまう。そこから一線を越える何かが始まってしまう気がした。
高畑:加奈は人に頼るのがヘタな人だと思うんです。でも、私もその気持ちがわかる。なんでも「自分一人でやれる! やらなきゃ!」と追い詰められてしまう。本当は助けようとしてくれる人がいっぱいいるのに。
菅野:実際、産んでみると「やらなきゃ!」と迷っている暇がないんだよね。
高畑:そうなんですね。
菅野:自分ももしかしたら爆発するかもしれない。でもそうならずに、戻ることができる瞬間が必ずある。そう、この映画は投げかけていると思います。
■計画どおりにいかない
――3人自身はワーク・ライフ・バランスをどう取っているのか。
尾野:いや~私は考えたことないです。1回結婚しましたけど、当時も仕事のことしか考えてなかった。もともと役を引きずらないタイプなので、うまくバランスがとれているのかな。
菅野:私は育児と仕事のバランスをまだ掴みきれていないです。両立はしたいけど無理! 今回、復帰してみて「1年、2年ではムリかも。10年くらいかけてゆっくりでいいのかな」と思ったり。でも、仕事をすると脳が切り替わって、「よし!」と再び子どもと向き合えもするんですよ。なにより、仕事中は自分の荷物しか持たなくていい。いつも両手に子どもの荷物を持っているとホント疲れちゃうんだよね。
尾野:すごくリアルで参考になる(笑)。子育ての話ってキレイなことしか聞かないから。
菅野:そこがいまの育児のしんどさだと思う。SNSとかで「ステキな子育て」を目にしたりするけど、いや日常にはできないから!
高畑:私、今日すごく勉強になっています。菅野さんは結婚や出産の時期を計画しましたか?
菅野:いやいや、全然計画どおりにはいかなかったですよ。「周囲に迷惑かけないように」ということにはすごく頭を使ったけど。