「都などの自治体にとっては、教員の働き方改革は喫緊の課題だったはず。子どもの安全だけでなく、都は教師も守るべき立場なのです。先生の仕事をいかに減らすか考えるべきところを、自治体がむしろ教師を働かせることを推進していることに、私は強烈な違和感を持っています」

 冒頭の男性教諭が漏らしたように、コロナ禍で、学校は消毒や検温、新しい授業スタイルを求められており、現場には余裕がない。そんな中で、真夏の五輪観戦の引率は可能なのか。

「平時でも生徒・児童の引率は大変ですが、感染対策や熱中症予防にも細心の注意を要します。リスクを考えて事前に備えなければいけないことが山ほどある中、検査まで求めることになったら、現場の負担は相当なものになりますよ」

 五輪観戦は学習指導要領の「学校行事」として組み込まれるため、制度上は、観戦に行かなければ欠席扱いになる。都は「子どもたちが不利益を被らないよう、各校の校長の裁量で何らかの配慮をしてもらうよう通達した」と説明するが、内田氏は、措置が学校側の裁量にゆだねられていることにも疑問を呈する。

「不参加の生徒をどうするかについては、本来であれば学校ごとではなく、自治体ごとに決めるべき。取り扱いはお任せしますという形で丸投げするのは無責任です」

 都内の公立学校における五輪観戦は、2016年に始まった「東京2020教育プログラム」の集大成として位置付けられている。「教育効果を唱えるのであれば、リスクと天秤にかけて、リスクを効果が上回る必要がある」と内田氏は否定的だ。

「会場に行かなくても、五輪に関わる方法はあります。今はせっかく一人一台タブレットが配られているのですから、ネットを活用すればいいのに、と思います。会場観戦は保護者に無料チケットを配って、各家庭で判断すればいい。学校行事として集団で行動すれば、強制ではなくても、無言の同調圧力がかかります。『友達が行っているのに自分だけ行かないのは……』という生徒も出てくるでしょう」

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無症状陽性者の扱いは?学校が判断するの?