富士山の噴火が、国が具体的な対策の策定に向けて動きだすなど、現実的なものとして徐々に認識され始めた。ひとたび噴火すれば、噴石や火山灰の被害は静岡県、山梨県にとどまらず、首都圏全体に広がりかねない。
広範囲に影響を及ぼしかねないのが火山灰だ。1707年の宝永噴火では、16日間にわたって降り続け、17億立方メートルという膨大な灰が大地を覆った。東京ドーム1370杯分に相当する量だ。噴火対策は富士山のすそ野だけではなく、首都圏全体の問題なのだ。
火山灰は2ミリ以下の細かい粒子だが、30センチも積もれば重みで木造家屋は倒壊してしまう。
われわれの体にも襲いかかる。災害医療に詳しい国立保健医療科学院・健康危機管理研究部の石峯康浩氏はこう話す。
「気管支ぜんそくなど呼吸器に持病がある方は、特に注意が必要です。火山灰には亜硫酸ガスや硫化水素、フッ化水素などの有害物質が付着しています。火山灰を吸い込むと、ぜんそくの発作が起きる危険性があります」
呼吸器を守るには、やはりマスクは欠かせない。宝永噴火と同じ規模の噴火が起きると、約1250万人が呼吸器系の健康被害を受けるという予測もある。薬局などで売られている一般的なマスクより、建物の解体作業などで使われる高機能マスク(防じんマスク)のほうが効果的だ。通信販売などで入手できる。
ただし、高機能マスクとはいえ、きちんと装着しないと効果がない。普通のマスクとは装着方法が異なるので、あらかじめ説明書を読んで練習しておきたい。特に、鼻の部分をしっかり覆わないと、火山灰は簡単に入ってきてしまう。携帯に便利な小さいタイプもあるので、普段から持ち歩いておいたほうがいい。家の中に火山灰を入れない工夫も必要だ。
「家の中に火山灰が入らないように、通気口などを粘着テープでしっかり目張りしてください」(石峯氏)
粘着テープで防ぎきれない場合は、専用のフィルターがある。ホームセンターなどで売られている。こうしたグッズを活用するのもひとつの方法だ。
※週刊朝日 2013年7月5日号