英国出身でアカデミー賞俳優のコリン・ファースが、最新出演映画「スーパーノヴァ」についてアエラの単独インタビューに応じた。コロナ禍の影響や年齢を重ねることについて率直に語った。AERA 2021年6月14日号に掲載された記事を紹介する。
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「英国王のスピーチ」(2010年)で米アカデミー賞主演男優賞に輝いた名優コリン・ファース(60)。
最新出演映画「スーパーノヴァ」では、若年性認知症を宣告されたパートナーの人生の最終章を見つめるピアニストのサムを演じる。パートナーのタスカーを演じるのはスタンリー・トゥッチ。ハリー・マックイーン監督による脚本に、2人のベテラン俳優が息を吹き込む感動作だ。
■親友だったことは有利
──パートナーが認知症の男性という非常に難しいテーマに取り組む本作。役づくりで心がけたことは何ですか。
コリン・ファース(以下、ファース):サムという人物の命は脚本から生まれた。サムとタスカーの関係を描くうえで、タスカー役のスタンリーと僕が昔からの知り合いで親友という点が、大きな助けになったと思う。でも俳優としては、それは関係ない、と否定したい気持ちもある。役づくりは創造的な作業だと考えるから。しかし、本作では僕らが親友で、深く理解しあえる関係である点が有利に働いたのは確かだと思う。
──過酷な現実に直面すると、人間の真実の姿が見えてくる。そんなことに気づかせてくれる作品でもありますね。
ファース:そうだと思う。でも午後10時に自分を発見したと思っても12時には自分が誰かわからなくなることもあり得る。自分を発見する旅に終わりはないし、このような恋愛関係に身を置くことで、その意味はさらに深まると思う。
──新型コロナウイルスで、孤独がより大きな課題になりました。本作にも異なる意味が出てきたのでは?
ファース:確かに、コロナ禍という状況で、全てが異なる意味を持つようになったと思う。人と触れあうことの大切さを自覚させられる体験だった。だから、本作で描かれている親密な関係、同性であれ異性であれ、皆がハグをして触れあう関係を保つことが、重要だと思えるようになった。
逆に、一人になってしまうことに、より強く恐怖を感じたりもする。サムも映画で“一人になりたくない”という言葉を2度続けて繰り返す。それが今、やけに重く心に響くんだよ。