──脚本に引かれて、出演を決めたそうですね。あなたのキャリアにおいて、本作はどんな意味を持ちますか。
ファース:僕の興味を引いた点は、2人の年齢だった。もちろん僕らがこの年齢だからオファーがきたわけだけれど、この世代の恋愛をめぐる映画はそれほど多くない。長い過去をもった人間同士の関係を演じる、という意味で興味深かったんだ。20代の頃に演じた役には、語るに足る長い過去はなかったから。もっとも、僕が退屈な25歳だったから退屈な25歳の役がまわってきたのかもしれないけれど。
■貴重な経験だった
──サムを演じることで人生の最終章と向き合うことについて感じたことは?
ファース:年をとって、過去から個性を引き出すような役が増えて面白くなった。例えばサムとタスカーが向かう未来は、おどろおどろしい待ち伏せ攻撃のようなもの。年齢のせいで予期せぬ事件が未来からふりかかってくるわけだ。1人がショッキングな決断をし、もう1人は生涯孤独となる。平穏な人生の最終章を予想していた時期に、これまでにない貴重な経験だったよ。
(ライター・高野裕子)
※AERA 2021年6月14日号