西川さんによれば、音楽とスポーツのほかに人気が高いジャンルが、五つあるという。(1)健康・美容、(2)お金、(3)趣味・教養、(4)食、(5)旅だそうだ。
ユーチューブの発信者は、世界各国にいる。
「現地の人の発信を楽しむため、検索のときに日本語ではなく英語で入れてみましょう。大谷翔平ではなくSHOHEI OHTANI、ニューヨークではなくNEW YORKと」
英語での番組でも、設定(右下の歯車マーク。スマホの場合は画面右上の…マーク)を操作して日本語字幕を出せるものがある。また、ユーチューブの発信者のほとんどが早口で話すが、そのスピードをゆっくりとさせる設定も可能だ。
人気ジャンル以外でも、利用のしがいがある。西川さんは、ご近所情報チャンネルが好きだそうだ。
「自分の住所を打ち込んで出てきたチャンネルを見て、驚きました。40年近く住んでいるのに、気が付かなかった公園が紹介されていたんです。地元再発見に役立ちます」
報道のチャンネルも充実している。
「テレビの公式チャンネルで、ニュースを見たいときに見られるのがいいですね。おもしろいのは地方局と地方紙。自分の出身地の情報を知ることで、そちらに住む親や友人と話題を共有できます。海外のメディアに触れるのにも便利です。アメリカなら3大ネットワークのNBCのほかに、保守寄りのFOX、リベラルなCNNもチェック。イスラム教国のアルジャジーラも見るなどして、バランスを取るようにしています」
この「バランスを取る」ということが、実はユーチューブ視聴にとってとても大切なのだ。
ユーチューバーと呼ばれる制作者は、広告収入を得るため視聴回数を稼ぎたい。そのため、過激な主張や偏向した意見をアピールするものも多い。
「人間、年を取ると考え方が狭くなりますし、自分の考えが正しいと確認したい気持ちが強くなります。そのため自分と同じ主張の動画を見ると、気持ちが良い。一度見始めるとAIがそちらばかり勧めてきます。左寄りの人はより左に、右寄りの人はより右に。洗脳されかねませんので、注意しましょう」
前述のアスマーク社の調査によると、「ユーチューブは楽しく、気軽で、世界が広がるというポジティブなイメージが高い。一方、ツイッター、インスタグラム、フェイスブックは“どの情報が信用できるかわからない”と感じている人が多く、特に年代が上がるほどその割合が高い」という。
しかし、ユーチューブにも落とし穴があることは忘れずに。
そう聞くと、始めるのを躊躇(ちゅうちょ)する人もいるかもしれない。そういう人は、企業・団体や著名人の公式チャンネルから視聴してみてはどうか。
自分自身にとって最良の動画を楽しみたい。(本誌・菊地武顕)
※週刊朝日 2021年6月18日号