![横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。20年東京都名誉都民顕彰。(写真=横尾忠則さん提供)](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/e/f/508mw/img_ef4b622ad17520ab064808b1b08dac9a44935.jpg)
![瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)/1922年、徳島市生まれ。73年、平泉・中尊寺で得度。著書多数。2006年文化勲章。17年度朝日賞。単行本「往復書簡 老親友のナイショ文」(朝日新聞出版、税込み1760円)が発売中。](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/6/5/557mw/img_65e9f8e3530ee67ecde1ea5f279e5bb840886.jpg)
半世紀ほど前に出会った99歳と84歳。人生の妙味を知る老親友の瀬戸内寂聴さんと横尾忠則さんが、往復書簡でとっておきのナイショ話を披露しあう。
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■瀬戸内寂聴「今回は担当編集が書かせていただきます」
瀬戸内寂聴さま
横尾忠則さま
いつも「往復書簡 老親友のナイショ文」へのご執筆ありがとうございます。今回、瀬戸内寂聴さんが風邪を召され、どうしてもペンをとることができないとのことで、この連載の編集担当をしております不肖・鮎川哲也がピンチヒッターを仰せつかりました。
そこで、多くの読者の方々はご存じでしょうが、改めて、「往復書簡」について紹介します。
本連載は2019年8月にはじまり、今回で90回目を迎えました。瀬戸内寂聴99歳、横尾忠則84歳という人生の大先輩が、社会の今を鋭く見つめ、お二人が毎週筆をとっていることは奇跡ともいえます。
雑誌の連載の多くは先々のことと、時間的なことを考え、何本かの原稿をストックしておくことが多くあります。しかし、「往復書簡」は毎回、その週の出来事、そのときのお気持ちなどを、まさに“撮って出し”状態で、走り続けている連載なのです。(ギリギリとも言えますが……)
とはいえ目の前の刹那な出来事だけではなく、深淵なる生と死の世界を、平易でありながら奥深い筆致でしたためています。
「『今』が全てで『今』が最高です」(横尾)
「人が死ぬというのは、永遠の世界に生き返ることなのかもしれませんね」(瀬戸内)
「生きるために目的など必要ないですよ」(横尾)
「人間は何のために生まれてきたのか<中略>愛するためです」(瀬戸内)
「これから先の人生も何が起こるか楽しみです」(横尾)
「人間は生きている限り、自分では思いもよらない日を迎えるものですね」(瀬戸内)
と、お二人の金言の数々もちりばめられています。人生と格闘し、その神髄を極めたからこそ発することができる言葉の一つひとつは、生きる喜びをあらためて感じさせてくれます。
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