今年2月にはこの連載をまとめた単行本『往復書簡 老親友のナイショ文』も出版しました。仏教国で高貴な色とされる鮮やかな黄色をベースに、長寿のシンボルでもある鶴と亀が鎮座する横尾忠則作のカバーは芸術作品でもあります。どうぞ、こちらもよろしくお願いします。
さて、この連載のこの欄は横尾忠則さんへのお手紙の形式を取っているので、僕からもお手紙を差し上げます。
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横尾忠則さま
横尾さんは連載の中で、生きることについて度々触れています。人間は進歩があるという考えは幻想だ、そう横尾さんは仰います。
先を心配して準備をして、でもうまくいかなかったり、目標を持って臨んだのに達成できず落ち込んだりと、僕はそんなことの繰り返しです。
どうすればそういう境地になれるのでしょうか。横尾さんの域に達することはできませんが、少しでも近づくことができればとも考えています。
なんだか、瀬尾まなほさんの回のように悩み相談みたいになりました。
お会いする度にやさしくお迎えくださる横尾さん。その深遠な考えを知りたい気持ちは僕だけでなく、多くの読者が持っているはずです。鮎川哲也
■横尾忠則「人間は遊ぶために生まれてきているんです」
鮎川哲也さん
毎週お世話になっています。〆切がタイトなので、時にはあわてますが、マイペースに戻っていますので、入稿の〆切で穴を空けるようなことはしません。どうぞご心配なきよう。今週は鮎川さんにピンチヒッターで登場していただくようお願いしました。ピンチヒッターというよりリリーフ投手ですね。初体験のピッチャーですから、球種は読めません。いきなり振りかぶって投げられた球は打ち易い直球ではなく変化球でした。
まあ、バットに触れたもののファールでした。いやー、鮎川さんの投げられた球は実に打ちにくい球で、ヒットにする自信は全くありません。野球の話はここまでで、ここから先は僕の創作の話に切り換えてお答えしたいと思います。大して参考にもならない寝言だと思って聞いて下さい。