2年ぶりとなる国会内での党首討論は、菅首相が前回東京五輪の「思い出」を語るなどして会場から失笑が漏れた。他方、野党第1党の立憲民主党の枝野代表の追及も迫力に欠け、議論は低調に終始した。AERA 2021年6月21日号から。
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6月9日に開催された2年ぶりの党首討論は、立憲民主党・枝野幸男代表の「総理、お疲れ様でございます」という一言で始まった。コロナ対応に奔走する菅義偉首相に対するねぎらいの意味があったのだろう。しかし、枝野氏自身が討論の中で「戦後最大の危機」と定義した今の日本の状況を考えると、あまりにも迫力に欠ける冗長な一騎打ちを象徴する言葉のように聞こえた。
今回の党首討論は特別な意味を持つ。9月末の自民党総裁任期や、10月21日の衆議院議員任期の満了を前に、必ず行われる解散総選挙。つまり、今回の選挙は「現在の政権」か「それ以外」を決定する政権選択の重要な選挙なのだ。自民党にとっては「国民が菅政権を信任するか否か」の選挙であり、野党にとっては「それ以外」の選択肢を示す選挙になる。
選択肢の筆頭である野党第1党の立憲民主党。その党首である枝野氏が最初に追及したのは「早すぎる緊急事態宣言の解除」だった。
■1日100万回超え?
今年1月7日に発令された2回目の緊急事態宣言は、3月21日まで約2カ月半続いた。その約1カ月後には3度目の緊急事態宣言の発令に追い込まれた。枝野氏は「解除が早すぎた」と菅首相の決断を批判。6月20日に期限を迎える宣言解除を念頭に「東京で1日当たりの新規感染者が50人程度になるまで、苦しくても解除してはならない」とし、リバウンドを防ぐためには「十分な補償がセット」ではないかと菅首相の政策をただした。
これに対し、菅首相はロックダウンをやった国でも簡単にコロナの蔓延は収まっていないと反論。補償の議論はスルーして、この後、しばらく「ワクチン接種」こそがコロナ収束の切り札とする持論を述べた。その上で「昨日は(ワクチン接種が)100万回を超えてきた」と自らぶち上げた「1日100万回のワクチン接種」の成果を表明。続けて自らのリーダーシップをこう自画自賛した。