王室にとって最も罪深いのは、皇太子夫妻が米ボストンに飛んで、アースショット賞の授賞式に訪れた機会に、予告編の公開をぶつけたことだろう。この賞は皇太子が設立に関わったもので、環境問題に取り組む個人や組織を表彰し、世界的な啓発を促す。皇太子にとって8年ぶりの米国訪問で、国際舞台に顔を見せる重要な機会と位置づけられていた。
授賞式でキャサリン妃は緑色のレンタルのロングドレスをまとい、ダイアナ元妃のアクセサリーを身に着けて、夫のスピーチに拍手を送った。予告編の公開は、兄夫妻の晴れ舞台から注目を奪うのに十分だった。環境問題対策の重要さについては、ハリー王子も以前に講演したこともあった。それだけに、兄に協力するどころか妨害するやり方に批判が殺到した。
番組ではメーガン妃の実父や義理の姉にも攻撃の矛先が向いた。また、親交があっても番組制作には協力しない人も目立った。オバマ夫妻、ジョージ・クルーニー夫妻、エルトン・ジョン、オプラ・ウィンフリー……。王室で唯一仲良しとされたユージェニー王女さえ、番組には顔を見せなかった。
とりわけウィンフリー氏は、21年3月のインタビュー番組でメーガン妃から「英王室内で人種差別に直面した」と打ち明けられるなど、よき理解者とされてきた。だが当のウィンフリー氏は「他の人の家庭内問題には介入しない」と距離を保つ。また、メーガン妃を友人と呼んでいたミシェル・オバマ氏も、先のインタビューについて「英王室に人種差別があっても、驚かない」とコメントするなど、微妙な距離感が浮き彫りになっていた。
15日には後半3話が公開される。デイリー・メール紙は「致死性の毒がある」と王室関係者の言葉を引用するなど、世間の批判とは裏腹に、注目が高まっている。この日はロンドンでキャサリン皇太子妃主催の女王追悼クリスマス会が行われるのだが、ハリー王子夫妻は意に介さないようだ。
”お騒がせ夫妻”のやりたい放題に、国王と皇太子も黙ってはいない。夫妻について迅速に対処すると言われる。英メディアのアンケートでは、国民の98%が「ハリー王子夫妻の称号はく奪を望む」という結果だった。
来年1月10日には、ハリー王子の回顧録「スペア」が発売される。温情を持って接した女王はもういない。国王が王子夫妻と決別する「Xデー」はいつだろうか。
(ジャーナリスト・多賀幹子)
※週刊朝日オリジナル記事