「羽目をはずす」の「羽目」、「こけにする」の「こけ」……その言葉、意味を知らずに使っていませんか? とっておきの漢字うんちくを、現在2021年7月号が発売中の朝日新聞出版『みんなの漢字』から15個紹介します。※監修・久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)
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Q 最も多くの漢字に使われている部首は何?
A 艸(そう)
漢字はいくつあるのか、その正確な数はわかっていませんが、日本で最も多くの漢字を収録している漢和辞典は『大漢和辞典』(大修館書店)で、約5万字にのぼります。その中では、「くさかんむり」などの艸部の漢字が最も多く、2200字弱です。2番目が「さんずい」などの水部で約1800字、3番目が「きへん」などの木部で約1600字です。ちなみに、最も少ないのは艮部で6字です。
Q 値引きを「勉強」というのはなぜ?
A 無理して努力するという本来の意味に基づく
「勉」は「つとめる」、「強」は「しいる」という意味なので、「勉強」はもともと「嫌でも無理して努力する」という意味です。値引きは、商人が嫌々ながら無理して行うことなので、本来の意味に基づいて「勉強」といいます。明治以降に学習の場で用いられるようになり、勉学の意味で「勉強」といわれるようになりました。
Q 「一目置く」の「一目」って何?
A 囲碁の一手
囲碁で、一つの碁石や碁盤上の一つの目を「一目」といいます。対局で実力に差がある場合、弱いほうが先に一目ないし数目を置くことができます。いわゆるハンディキャップです。そこから、相手の実力を認めて敬意を払うことを「一目置く」というようになりました。ほかにも、序盤の石の置き方を表す「布石」や、のちに自分が有利になることを見込んでわざと石を取らせる「捨て石」など、囲碁が由来の言葉はたくさんあります。
Q 和菓子の「ういろう」はなぜ「外郎」と書くの?
A 「外郎薬」という薬と色や形が似ていたから
中国の元の時代に、薬の調達を担当する「礼部員外郎」という官職がありました。その職にあった陳宗敬という人物が日本に帰化し、つくり方を伝えた薬を「外郎薬」といいました。「外」には「うい」という読みもあるのです。和菓子の「ういろう」は、色や形がその薬と似ていることからその名がついたといわれています。また、外郎薬の口直しにその和菓子を食べたことが由来とする説もあります。
Q 「一生懸命」と「一所懸命」は同じ?
A 「一所懸命」が「一生懸命」に変化
「一所懸命」は、中世の武家社会で生まれた言葉です。武士が、生活の糧とした、1カ所の領地を命懸けで守ることを表し、物事に命懸けで取り組むという意味になりました。江戸時代になると、命懸けで領地を守る機会がなくなったこともあってか、「いっしょ」が「いっしょう」と誤用されるようになり、「一生懸命」が定着したといわれています。