内村は誰かを傷つけることに非常に敏感だという。それは、昨今のように“容姿いじり”を代表とするハラスメント的笑いがやりづらくなる前からだそうだ。
【写真】くりぃむ上田に「天才」と言われながら25年間パッとしなかったのはこの人!
理想の上司ランキング、男性部門で5年連続1位のウッチャンこと内村光良の“上司力”に迫った書籍『チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論』(朝日新聞出版)。関係者への取材を重ねた同著・著者の畑中翔太が、リーダー内村を分析する本連載。
第13回目のテーマは「誰も傷つけない」。
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会社のために汗水を垂らして働く“モーレツ社員”が過去のものとなっている今、部下 を「伸ばす」育成を知る以上に、「つぶさない」育成を知ることは非常に重要だ。
そのために良きリーダーがまずすべきこととは、「相手を傷つける」という行為に「敏感」になることだ。
内村は「誰かを傷つける笑い」をとても嫌う。日本テレビのディレクター・黒川高氏は、内村自身から収録後に何か不満を言われることはほとんどなく、もし言われるとしたらそれは間違いなく、“誰か”を気遣っているときだと話す。
「例えば、演者さんに電流をビリビリ流すくだりがあったとき、あれは大丈夫だった? とか、あれちょっとケガしてない? と僕のところに聞きにこられるんです。 編集についても、通常は出演者が自分の見え方を気にして相談にくるケースが多いんですが、内村さんの場合は、話題に出た人や出演者が傷つかないようにしておいて、という感じなんですよ」
自分だけではなく共演者の発言でも、収録中に無駄に人を傷つけたと思われるような箇所や、みんなで特定の演者を責めている感じになっているようなくだりは、内村から必ず編集対応を依頼される――そう証言するのはテレビ東京・伊藤隆行プロデューサーだ。
「『にちようチャップリン』がはじまった頃、女芸人さんをくくって『ブスで何が悪い』みたいな自虐ネタをやろうとしたときも、『自虐で笑いにするのはわかるんだけれど、これをテレビがくくった時点で、人を傷つけてないか?』とすごく気にされてましたね」