■めまいにともなうほかの症状が重要

 一方、脳が原因で起こる中枢性めまいは、めまい全体の約1割と少ないものの、生命に関わる「危険なめまい」といえる。横浜市立脳卒中・神経脊椎センター副病院長で脳卒中・神経疾患部門長の城倉健医師は言う。

「脳の病気でめまいがみられる場合、『脳卒中』が疑われます。その場合は一刻も早い対応が必要となるため、まずは中枢性めまいの可能性を念頭において原因を特定します」

 めまいは原因による分類のほか、症状により、グルグルと目が回る「回転性めまい」、からだがフワフワと浮くような「浮動性めまい」、立ち上がったときにクラッとする「立ちくらみ」という3タイプに分けられる。

「一般的に、耳が原因のめまいは回転性、脳が原因のめまいは浮動性が多いといわれますが、例外もあります。患者さんにより症状の感じ方も異なり、定義どおりに分類できないことも多いため、めまいの性質から病名を特定することは難しいでしょう」(城倉医師)

 危険なめまいを見分けるための重要な判断材料となるのが、めまいと一緒に起こる「随伴症状」だ。中枢性めまいでは、ものが二重に見える、話すときにろれつが回らない、手足がしびれるなどの症状をともなうことが多く、どれか一つでもみられる場合は直ちに救急車を呼ぶ必要がある。

 心臓や血管などの病気、頸椎(首の骨)の変形、過労などが原因でめまいが生じることもある。加齢もめまいの要因のひとつであり、高齢者にみられる耳石器や脳の機能の衰え、骨量の低下、薬の多剤併用なども、めまいの原因になるといわれる。

■受診するなら「めまい相談医」へ

 末梢性めまいは直ちに生命に関わることはないが、「放置しても問題ない」とはいえない。例えば、メニエール病は「めまい発作をくり返すほど、難聴も悪化する」と肥塚医師は話す。また、高齢者のめまいや平衡機能の低下は「転倒」のリスクにもつながる。

「高齢者の転倒については、フレイルやサルコペニアなど整形外科領域の疾患との関連が注目されていますが、めまいや平衡障害は転倒のリスクを2倍高めるといわれています。そのリスクは、実は脳卒中を起こした人と同程度。骨の強度や筋力が低下した高齢者はちょっとした転倒でも骨折しやすく、とくに大腿骨近位部骨折では寝たきり、つまり『要介護』の状態になる可能性や死亡率が高まるという報告もあります」(肥塚医師)

 怖くないめまいでも、QOL(生活の質)や生命予後に影響をおよぼす可能性は大きく、正確な診断と適切な治療で改善することが賢明だ。

 めまいの治療法は、原因疾患により異なるが、めまいを専門的に診断・治療する医療機関は多くない。めまいの症状がみられた場合は、めまいの専門的な知識と治療技術を有し、日本めまい平衡医学会が認定する「めまい相談医」を受診することが望ましいと両医師は口をそろえる。日本めまい平衡医学会のホームページに、医師の名前と所属病院の一覧が掲載されているため、参考にしてほしい。

(文・出村真理子)

※週刊朝日2021年7月2日号より

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