巨大な裁量権を持つ入管。そこでは、14年間で17人が亡くなっている。指摘されているのが入管の「体質」だ。「密室」で、一体何が起きているのか。AERA 2021年6月28日号から。
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スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)の死の真相解明は3カ月以上たっても進んでいない。日本を愛したウィシュマさんは3月6日、収容先の名古屋出入国在留管理局の収容施設で命を落とした。入管収容施設は、オーバーステイなどで在留資格のない外国人を送還させるまでの間、収容する場所。全国に17カ所あり、名古屋入管はその一つだ。
支援団体などによると、2017年6月、ウィシュマさんは「日本の子どもたちに英語を教えたい」という夢を持ち留学生として来日。しかし学費が払えず、19年1月に在留資格を失った。昨年8月、同居中のスリランカ人男性のDVから逃れようと警察に駆け込むと、不法残留容疑で逮捕された。その後、名古屋入管に収容され、今年1月中旬から体調が悪化。トイレやシャワー時には職員の介助が必要になり、体重は半年で20キロ近く減ったという。
名古屋入管での面会活動などを続ける支援団体「START(外国人労働者・難民と共に歩む会)」の学生メンバー、愛知県立大学3年の千種(ちくさ)朋恵さん(20)は、2月に2回、ウィシュマさんと面会した。
「1度目の面会の時は、2人の職員に両脇を抱えられ今にも倒れそうな状態で、『指先がしびれる』などと話していました」
■仮放免を2度申請
次の面会では、ウィシュマさんは車いすで現れた。嘔吐してしまうため、面会中もバケツを持っていた。熱が37.5度以上あり、「体が石みたいで動かない」と訴えたという。千種さんたちは、入管の処遇部門にウィシュマさんが点滴を受けられるよう申し入れを行ったが受け入れられなかった。またウィシュマさんは、一時的に収容を解く「仮放免」も2度申請したが、認められないまま亡くなった。
収容中に何が起きたのか。入管庁に問いただすと、
「最終報告書をまとめているところで、現時点で何もお答えすることはできない」
とだけ回答した。
外国人の在留資格などを定めた出入国管理法(入管法)は1951年、出入国管理令(ポツダム政令)として制定され、翌52年に法律としての効力を持つようになった。以来、収容制度は一度も改正されていない。
閉ざされた「密室」で、一体何が起きているのか。