桜を見る会でも言えるのだが、招待した後援者の名簿など破棄する必要はなかった。
安倍内閣のころから、公文書の類いを隠すのがなぜか当たり前のようになってしまった。たとえば、この間、収容中のスリランカ人女性が死亡した事件でも、出入国在留管理局は監視カメラのビデオ映像の開示を拒んでいる。とんでもないことだ。
そこで、菅首相に会ったら何としても言いたい。今後、公文書の類いはすべて保存して、国会で開示を求められたら開示することに、抜本的に改革すべきである、と。
実は日本では、公文書を破棄することが歴史的な伝統になっているようで、江藤淳という有名な学者は、日本では戦時中、戦前の公文書がすべて焼却されているので、それを調べるために何年も米国に留学していた。米国では、自国にとって都合の悪い公文書も、すべて保存されているからである。民主主義の国としては、それが当然だ。私は、菅首相に、そのように切り替えるべきだと進言するつもりである。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2021年7月2日号