徐々に進みつつあるワクチンの接種。一方で、接種後に何らかの原因で亡くなる人々がいるという情報が、気になっている人もいるのではないか。
【データ】発熱、頭痛だけじゃない ワクチン接種後に確認された副反応と割合はこちら
厚生労働省が公表したデータによれば、接種を開始した2月17日から6月4日までに、196人(女性104人、男性92人)が接種後に亡くなっていた。6月16日現在、ワクチンを1回以上接種した人の累計数は2003万1055人だから、およそ10万人に1人の割合だ。私たちはこの数字をどう受け止めるべきなのだろうか。
死亡者のうち65歳以上の高齢者が172人と大半を占めるが、20代(3人)や30代(2人)も含まれる。死因別に見ると、くも膜下出血や脳出血、心筋梗塞などが目立つ。死亡を報告した医師の判断では、ワクチンとの因果関係について「評価不能」が139件、「関連なし」が30件、「不明」16件。「関連あり」は14件あった(うち3件は重複。接種医と搬送先・解剖医のいずれかが「評価不能」と判断し、評価が分かれた)。厚労省は報告事例について専門家に再評価を依頼しているが、「関連あり」とされた14件のうち「因果関係は不明」などの理由で“却下”されたのは9件、「評価中」が5件だ。大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授の宮坂昌之医師が次のように解説する。
「因果関係の証明は極めて困難ですが、軒並み『不明』では不安材料になるだけです。ワクチン接種による副反応のリスクを見るには、ワクチンを接種していない人たちが、例えば脳出血やくも膜下出血によってどのくらい死亡しているかを考慮しなければなりません」
2019年に脳出血は年間約3万3千人、くも膜下出血は同約1万2千人が死亡している。宮坂医師が続ける。
「1日に平均で脳出血は90人、くも膜下出血で33人がワクチン接種とは無関係に亡くなっていることになります。ですから、ワクチンを打ったから脳出血を起こしたのではなく、たまたま脳出血を起こす人にワクチンを打った“紛れ込み”がほとんどだと思います。ただし、ワクチンはゼロリスクではないから、死者が出る可能性も否定できません」