90年代以降、明菜が何か活動を始めたり話題にのぼったりするたび、「幸せになってほしい」「元気になってほしい」という声が必ずといっていいほど毎回あがる。
「CDを買ったりコンサートやディナーショーに行ったりするわけでもない“外野”の人たちに、『いよいよ本格復帰か』と、30年以上ずっと言われ続けている。外野が口にする感情は特に無責任だったりするもの」
とミッツさんは言う。
「もしかしたら今、本当はものすごく幸せなのかもしれないじゃないですか。だから、その視点や文脈で明菜を語るのは『もうやめれば?』と思う」
ミッツさんは、この先の明菜は、「無責任な」心配をする世間に向けてではなく、コアなファンの前だけに現れる存在でいいのではないかと言う。
「報道陣も呼ばず、映像化もせず、現在のファンの前だけに現れてくれればいいと思うんです。そして、そのファンとともに、この先どういうふうにランディングしていくかなのでしょうね。曲や存在はもはや永遠に色褪せることはないと思うので」
中森明菜が現時点で歌手としての表立った最新の活動となるのが、2017年のディナーショーだ。前出の中森明夫さんは、そのディナーショーに足を運んだ。
「声はすごくよく出ていましたし、代表曲もすごく盛り上がりました。観客は40~50代が中心でしたが、ふと見ると、同じテーブルにいた男性が号泣しているんです。目の前で明菜さんが歌っているという事実にそれだけの熱度で感動できる。その光景に、中森明菜という歌手が、いかに特別な存在なのかということを体感しました」
「少女A」の“特別じゃない”“どこにもいるわ”と歌った瞬間から、明菜は特別な存在に変身していた。(本誌・太田サトル)
※週刊朝日 2021年7月2日号