鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)
鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)

写真は本文とは関係ありません(※イメージ写真/iStock)作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします
写真は本文とは関係ありません(※イメージ写真/iStock)
作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします

「何一つ自分で決めた経験がなく」「自己肯定感が皆無」と、生きづらさを感じている42歳女性。誰にも言えずに悩んでいるという相談者に、鴻上尚史が勧めた「判断できる情報を吸収する」具体策とは。

【相談109】「常に穏便に、言われた通りに生きていれば丸く収まる」というように生きてきました(42歳 女性 葵上)

 人生に行き詰まっています。40代契約社員の女性の葵上です。

 子どもの頃から、親にはお金がないと言われながら育ち、私立はダメ、留学はダメ、大学は地元の国立のみ、と言われ、高校は確実に入れるところ、大学は地元の国立、と言われた通りに進学し、就職は超氷河期で入れた会社に入社して結婚・出産。今は、子どもは高校生と中学生になりました。夫は仕事はできますが、人の気持ちを考えることができないひとで、10年前に女性に言い寄っているメールを見てしまい、そこから信用できなくなってしまいました。メールを見たことは言っていません。女性には既婚者に興味がないとふられていました。

 思えば何一つ自分で考えて決めたという経験がなく、常に穏便に、言われた通りに生きていれば丸く収まるというように生きてきて、自分がどうしたいのかわからなく、生きることに支障が出てきました。

 子どもの頃から仲の悪い両親の間に入り気を遣い、布団で泣いたり、時にはおどけたりしてきました。虐待されたことは一切ないのですが、冷やかされたり、酔っ払った親族の喧嘩を間近に見たりと、あまり普通ではない育ち方をしたのかも知れません。

 それでも若い頃はなんとか若さでカバーしてきたのですが、歳をとるにつれて、生きづらさを感じるようになりました。

 仕事で何かあっても、すぐに自分のせいだと思ってしまったり、相手の気持ちを考えすぎて疲れます。自信、自己肯定感が皆無です。

 幸いにも子どもたちは、勉強は苦手ですが、友達に恵まれ楽しく学校生活を送れているようで、そこはうれしいです。

 夫が仕事を頑張ってくれているおかげで、サラリーマンとしては高収入の部類かも知れませんが、最近はコロナによる在宅勤務のストレスなのか、数カ月無視されたり、出社が始まった今は時々外泊もしたりしています。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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