「潰しが効く」って何を潰すのか、「焼きがまわる」って何が焼けているのか……よく考えるとわからない慣用表現は意外と多いもの。現在2021年7月号が発売中の朝日新聞出版『みんなの漢字』から15の言葉の由来を紹介します。 ※監修/久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)
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Q 一石二鳥の由来は?
A 英語のことわざを訳した
四字熟語というと中国の故事が由来と考えがちですが、「一石二鳥」は英語のことわざが元になっています。「to kill two birds with one stone」ということわざで、日本で最初に市販された英和辞書といわれる1862年発行の『英和対訳袖珍辞書』には「石一ツニテ鳥二羽ヲ殺ス 一事両用ノ意歟(か)」と記されています。その後、4文字に詰められて広まったとされています。
Q 「完璧」の「璧」ってどんな意味?
A 祭祀などに使われる玉のこと
「璧」は、祭祀などに用いられる中央に穴の開いた円盤状の玉です。「完璧」はもともと、「傷のない完全な玉」という意味で、そこから広く「欠点がまったくないこと」を表すようになりました。「壁」と勘違いしてしまいがちですが、それでは本来の意味がなくなってしまうのです。中国の歴史書『史記』に、趙(ちょう)の国の藺相如(りんしょうじょ)が秦の国から璧を無傷で持ち帰ったという故事があり、その中の「璧を完(まっと)うして趙に帰らん」という言葉が由来です。
Q 「潰しが効く」って何か潰すの?
A 金属製品を溶かすことを指す
ここでいう「潰し」とは、金属製品を溶かして地金(じがね)にすることです。いったん地金にしても別の製品に再利用できることから、さまざまな仕事に共通する能力を身につけていれば、それまでの仕事を辞めても他の仕事に就けることを表すようになりました。
Q 日本のことを英語で「ジャパン」というのはなぜ?
A 中国語で「日本国」を表す「ジー ペン クォ」が由来
「ジャパン」の由来には、イタリアの商人で旅行家のマルコ・ポーロが関連しているといわれています。マルコ・ポーロが中国を訪れた際に、「日本国」を中国語で「ジー ペン クォ」と発音しているのを聞き、旅行記『東方見聞録』(1298年)で「ジパング」と記しました。これが、英語の「ジャパン」やフランス語の「ジャポン」、ドイツ語の「ヤーパン」、スペイン語の「ハポン」などに変化したといわれています。