うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格した杉山奈津子さんも、今や小学生の男の子の母。日々子育てに奮闘する中でとり入れている心理テクニックや教育方法をお届けします。
杉山さん自身が心理カウンセラーとして学んできた学術的根拠も交えつつ語る『東大ママのラク&サボでも「できる子」になる育児法』も絶賛発売中です。ぜひご覧ください。
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最近、何か新しいことを始めるときは、こんなルールをつくっています。
それは、「一気にやらず、まずは軽い気持ちで、ほんの少しだけ進める」こと。
実は、ちょっとだけ進めておくという行為には、驚くほど人を動かす効果があるのです。
■心理的ハードルを低くするために
こんな実験があります。
カフェで、ドリンクを買うと一つスタンプを押し、10個スタンプがたまると好きなドリンクを一つプレゼントするというカードをつくりました。
あるお店ではお客さんに何もスタンプを押していない状態のカードを渡し、別のお店では一つスタンプを押した状態でカードを渡しました。
すると、一つだけスタンプを押したカードを渡されたお客さんたちのほうが、10個のスタンプまでたどり着く人数が圧倒的に多かったという結果が出たのです。しかも、ドリンクを買いに店にくる頻度までも高くなったのだとか。
この実験では、まっさらで何もない状態からゴールをめざすよりも、「少し進んでいる」と思える状態からめざすほうが、ずっと達成しやすいということが証明されました。
また、「ゴールに向けて少し進んでいる状態」が続くと、継続しやすくなることもわかっています。
たとえば、500ページ以上ある分厚い小説を読もうというとき。最初から、「よし、読破してやろう」なんて気負っていると、「なかなかまとまった時間がとれないせいで……」と理由をつけて読み始められず、結局はそのまま放置してしまう可能性が高くなります。
そのくせ、書店で読みたい本を見つけては買ってを繰りかえしてしまうため、私の部屋には、読んでいないままの分厚い「積ん読」が、相当数、置きっぱなしというありさま。
この状況を打破するのに、「少しだけ進める」ルールは、画期的な効果を発揮してくれました。