■スポーツ放送にも影
NBCは、東京までの4大会で43億8千万ドル(約4860億円)の放映権契約を国際オリンピック委員会(IOC)と結んでいる。1大会当たり10億ドル強の放映権料で、全米広告収入が12億ドルとすると差し引きは単純に2億ドル強となる。このほかにグッズやイベントなどの収入が上積みされる見込み。
また、NBCはプライムタイムまで視聴者を待たせないために、ストリーミングサービスで全競技を7千時間流す。一般的に人気がある体操や水泳以外の競技に関心がある視聴者には嬉しいサービスで、テレビで放送しない競技ではオンラインとしては単価がいい広告収入が見込まれる。
しかし、日本で新型コロナ感染が沈静化せず、万が一、五輪が中止となった場合でも、NBCが被るダメージは大きくはないとみられる。NBCユニバーサルの親会社コムキャストのブライアン・ロバーツCEOは昨年、東京大会中止を懸念し、巨額の費用に対する保険に入っていたと明かしている。
「大会が実施されなくても、損失は被らない。利益が減るだけだ」
と話し、赤字は避けられるシナリオだ。
ただ、大会が開催されてもNBCが懸念する要素はいくつかある。新型コロナによるロックダウン中は、若い人を中心にNetflixなどストリーミングサービスを見る習慣が急速に広がった。これが、若い人のスポーツ中継離れを加速させている。新型コロナは、東京大会の行方だけでなく、テレビのスポーツ放送の将来にも影を落としている。(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)
※AERA 2021年7月12日号