新型コロナウイルス感染者の長引く後遺症が、世界中で報告されている。日本でも厚労省の研究班の中間報告が発表された (c)朝日新聞社
新型コロナウイルス感染者の長引く後遺症が、世界中で報告されている。日本でも厚労省の研究班の中間報告が発表された (c)朝日新聞社
AERA 2021年7月15日号より
AERA 2021年7月15日号より

 新型コロナウイルスで、無症状でも安心はできない。米国の約200万人の調査で、無症状者の2割近くが後遺症を体験していた。ノルウェーの調査では軽症の多い若者でも5割に後遺症があった。AERA 2021年7月12日号から。

【図】米国の新型コロナウイルスの後遺症の割合はこちら

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 新型コロナウイルス感染症の、長引く後遺症「Long COVID」が問題になっている。国内外の調査で、無症状や軽症、若くても後遺症が起きることや、重症だった場合には肺の機能の低下が長く続くことなどがわかってきた。

 米国のNPO法人「フェア・ヘルス」は6月、米国内の民間医療保険会社への医療費支払い請求のデータベースをもとに、米国内の新型コロナウイルス感染者195万9982人の後遺症について解析した結果を発表した。解析対象は昨年2~12月に新型コロナウイルス感染症と診断された人だ。このうち入院が必要だったのは5%、入院は必要なかったものの急性副鼻腔炎や咳など新型コロナウイルス感染症の一環として起こったと考えられる症状のあった人が39%、味覚や嗅覚の異常だけ起きた人が1%、症状のなかった人が55%。

 全体の23%にあたる約45万人が、医療機関を受診するなど医療費の発生する対応が必要な、診断名のついた後遺症を体験していた。後遺症の発生頻度は症状が重かった人ほど高く、入院した感染者では約50%、入院の必要がない有症状の感染者では27%だった。一方、無症状の感染者でも19%に後遺症が発生していた。ただし、症状が味覚や嗅覚の異常のみだった人では、後遺症は報告されていなかった。

 最も体験者の多い後遺症は痛みだ。5.1%、つまり10万人近い人が神経痛や神経炎、筋肉痛などと診断されていた。その後、多い順に、呼吸困難(3.5%)や高脂血症(3%)、疲労感(2.9%)、高血圧(2.4%)と続く。

■感染者の61%に後遺症

 フェア・ヘルスは、解析にあたり、新型コロナウイルスへの感染前に糖尿病や高血圧といった持病や、慢性の腎臓や肝臓、肺の疾患、がん、心不全、先天的な神経疾患などのあった人を除外した上で、診断日から30日後以降の医療費の発生の有無を調べた。30日後以降に診断を受け、後遺症の可能性があると判断された人についてはさらに、感染前に同じ診断で医療費の請求がないかを調べた。請求があった場合には再発の可能性があるため解析から除外した。

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