一方、立憲は公認・推薦の33人の候補者のなかで女性は12人と、かろうじて3分1を超えた。野党第1党を自任する党としては不十分な数字だと私は思う。国会での五輪に対する態度や、菅政権に対する態度も、どこか緩慢に見えてしまい、ジェンダー平等とは言うけれど女性の人権のために地道に闘う女性候補者を育てることに本気度が見えない。

 また候補者60人中女性9人の自民党、23人中3人の公明党と、ジェンダー平等に全く無関心の自公は論外で、都民ファーストには勝てなかった。都民ファーストと自公、根っこは一緒のはずなのに、なぜか古い自公オッサンたちにあらがっているように見える小池百合子都知事の根強い人気の背景には、やはりジェンダー問題があるのではないか。

 都知事の退院後、都庁の職員がメディアの取材に答えて、都知事からの直筆署名入りの手紙が全職員宛てに配られたと話していた。“直筆署名入りの手紙が全職員宛てに配られるのは長年都庁に勤めているが初めてだ”と取材に答えた職員は感激を隠さなかった。政治家として何をしたかよりも、現場の人はこういう「女性的な」気遣いにぐっとくるものなのかもしれない。というか、こういうのにグッときちゃうオジサンたちが都庁には多いのだろう。腰を低くし、目線を低くし、気遣いを強いられるこの国を生きる女性としては、役職限らず全員に直筆署名入りの手紙を配るあざとさや、下心に警戒するものだけど、オジサンたちは素直に喜べるのだ。椅子にふんぞり返っていばる自民党の政治家たちより、ホモソーシャルな世界で男どうし傷をなめ合っている自民党の政治家よりも百合子さんのほうが個として闘っていてカッコイイ! そんな古いオッサン政治への反発への受け皿を、「女性政治家」としての小池百合子氏は担っているのかもしれない。たとえ小池氏がジェンダー平等には実は関心がなくても、関係ないのだ。

 今年は衆議院議員選挙がある。東京オリ・パラを強行し、コロナ対策が不十分な菅政権への不満がくすぶっているのは事実だ。その不満の受け皿になってしまっている「百合子的」なものを乗り越えなければ、政権交代はできないだろう。信頼できる野党の顔として共産党が選ばれた2021年の夏。共産党との協力と、本気のジェンダー平等がない限り、百合子的なものにまた食いつぶされてしまうのではないかと、立憲が心配だ。ちゃんと、勝ってほしいので。

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ただ女性というだけではダメ