確かに内村の意識の中には、「自分はまだまだダメなんだ」「自分はもっと頑張らなきゃいけないんだ」というMの人間性と、「次は自分にこんなチャレンジを課してやろう」「もっともっと自分ならできるだろう」というSの人間性が混在しているように思える。つまり、常に自らの成長を欲するドSの人格が、それに見合ったチャレンジをドMの人格に課すという、“成長の最高循環”を自らの中に内包している。


 
 この内村のマインドサイクルは、ビジネスの現場において、とくにある一定のポジションにいる人間にとっては重要な意識であると考える。なぜなら社会において、人は年齢や地位が上がってくるにつれて、徐々に「叱ってくれる存在」「戒めてくれる存在」がいなくなってくる。
 
 誰もが新人の頃は、同じ部署にいる社員のほぼ全員があなたを「叱ってくれる存在」であっただろう。しかし徐々にそのポジションが上がり、部下や後輩の割合が増えてくると、あなたの周りにその役割を担ってくれる存在が少なくなってくる。
 
 ようは、若い頃は成長というものを周囲から半ば強制的に求められるのに対して、上司となった人材は、自分自身でその尻をたたいていかなくてはならなくなる。
 
 女優・木村多江氏は、内村を「自分で自分を叱って、自分を律して、叱咤激励している」と評すとともに、その背後にある確固たる“自己の物差し”に感服したと語る。

「『いや俺はまだまだだなぁ』とご本人はよく言っているけど、私からすれば『いやもう十分ですけれど』と(笑)。でも本人にとって他人の物差しは関係ないんでしょうね。年齢やポジションがあがると、怒られなくなってくる。だから余計、自分に対して厳しい物差しを持ち続けないと、成長できなくなってしまいます。内村さんはその物差しがしっかりしているし謙虚です」
 
 30代であれば、まだ他人から指摘を受ける機会も少なくなく、さらに他者の価値観を受け入れる柔軟さもある。だが40代、50代に入ってくると、他者から言われなくなると同時に、自分の価値観の物差しもよく言えば非常に明確に、悪く言えば頑固になってくる。
 

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自身には「ドS」でいられるリーダー