「2人でブロックを部屋いっぱいに並べて、町を作っていくんですけど、途中でピースが足りなくなるんですよ。それで百科事典を並べてビルの代わりにしたり、文字の形をした知育玩具を組み合わせて塔なんかを作ってましたね。だから達也の作品を観ると、すごく懐かしい気持ちになりますね。畳を田んぼに見立てた作品があるんですけど、ちっちゃいときも畳の縁を『道』に見立てて、ミニチュアのバスを走らせて遊んだなぁ、とか」

 一方で、ゲームやアニメ、映画にも貪欲(どんよく)だった。小学校高学年から中学時代は、友人と自転車を走らせ「ちょっとうさんくさい雰囲気の中古ゲームショップ」に通い、1個100円の中古ソフトや雑誌を買っては楽しんだ。世は折しも、日本のサブカルチャー文化の隆盛期。1990年に「スーパーファミコン」が発売され、「ストリートファイター」や「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」などのシリーズが少年たちの人気を席巻していたほか、「週刊少年ジャンプ」は史上最高の653万部(94年)を達成するなど黄金期を迎えていた。こうした作品に登場するキャラクターたちは、現在の田中の作品にも度々登場している。

「僕は気に入った作品は何回も繰り返し観るほうで、アニメやゲームの設定資料集を買って読むのが好きでした。そのせいか、別の作品を観ても『これ、スター・ウォーズのあのシーンのオマージュじゃん……』とか、設定のほうが気になって物語が楽しめないこともあったり(笑)。昔から、無意識に“似ている部分”を探すクセはあったかもしれません。今もコロッケさんとか、モノマネ芸人の動画が好きでよく観ていますし」

「田中は、人や物の特徴を捉えるのがめちゃくちゃ上手」と話すのは、現在、田中のマネジャーを務める株式会社MINIATURE LIFEの渡邉郁美(36)だ。

「紙の端にささっと描いた似顔絵を見せてもらうことがあるんですけど、それが本当によく似ているんです。リアルに描くというより、必要最小限の線で特徴だけを抜き出す感じで。物の構成を分析して簡素化して表現できるのは、今の見立てにも通ずる部分だなと感じます」

(文・澤田憲)

※記事の続きはAERA 2021年7月12日号でご覧いただけます。

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