一昨年10月の宮城県丸森町 (c)朝日新聞社
一昨年10月の宮城県丸森町 (c)朝日新聞社
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 熱海市で発生した土石流災害では、9人が犠牲となり、20人が安否不明となっている(7月9日現在)。連日、捜索活動が続くが、悪天候や泥が多い現場での作業は難航している。

「土石流の起点から海岸までの傾斜角度は、約11度の急勾配です。土石流は時速40キロ弱、3分程度で勢いよく流れ下っていったのです」

 そう指摘するのは、山口大学大学院の山本晴彦教授(環境防災学)だ。

 黒々とした土石流は、逢初(あいぞめ)川を一気に駆け下りていった。伊豆山で盛り土が確認され、崩落源となった地点の標高が約400メートル。そこから谷を下って河口までの距離は、わずか約2キロしかない。

「このため土石流は3メートルほどの高さになって、川べりの住宅をなぎ倒した。これが扇状地であれば土石流は左右に広がるので、土砂の堆積(たいせき)深は浅くなる。ところが、今回は横に広がらなかった分、土砂が堆積し、警察官や救急隊員たちは腰まで泥につかっての作業を余儀なくされています。地形的に河岸段丘で高低差があるため、重機も入れず、行方不明者の捜索を非常に困難なものにしています」

 今回、崩落した盛り土の量は約5万5500立方メートルと推定されている。

 崩落現場を含む一帯の土地は、神奈川県小田原市の不動産会社が2006年に取得。宅地開発のため木を伐採し、09年には高さ15メートルの盛り土をする計画を示していた。ところが、20年には約50メートルまで積み上げていた。産業廃棄物も混入していたことから、熱海市は再三にわたって行政指導をしていたが、業者は応じないまま撤退したという。

 盛り土工事をする場合は、浸透してくる地下水や雨水を効率よく抜くため、排水パイプや暗渠(あんきょ)管などの設置が不可欠だが、排水工事をした形跡はない。静岡県の難波喬司副知事は「盛り土の工法が不適切だった」と明言し、人為的要因である可能性を示唆した。

 地質学者の塩坂邦雄氏がこう解説する。

「雨水や地下水が盛り土にたまってくると、保水能力を超えて重くなります。さらに、盛り土と山肌の境界部分に水が入ると、浮力が働き滑りやすくなります。それで一気に崩れたと考えられる」

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