東京に4度目の緊急事態宣言が発出された。宣言の意義や効果を疑問視する人が増えるなか、コロナ禍の2度目の夏をどう過ごすべきか。AERA 2021年7月26日号は「東京五輪」特集。
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最初の緊急事態宣言が行動変容、外出自粛に大きな効果をもたらした一方、2回目以降にその効果がなかったことは調査からも読み取れる。東京女子大学の橋元良明教授(情報社会心理学)らが昨年4月に行った調査では、緊急事態宣言発出によって「新型コロナに対する危機感」が増えた人が59.6%、「外出を自粛しなければいけないという気持ち」が強くなった人が62.7%いた。一方、今年1月、2回目の宣言時の調査ではそれぞれ26.8%、29.7%と半減している。橋元教授は言う。
「最初にあった恐怖心は薄れ、まん延防止等重点措置との違いもよくわからない。さらに、宣言による感染者減少の効果は見えないし解除の基準も不明瞭で自粛するモチベーションが湧きません。4回目になったいま、行動の変化は望めないでしょう」
加えて、今回の宣言やそれに伴う措置は医学的にも疑問だという。感染症に詳しい内科医でナビタスクリニック理事長の久住英二医師が言う。
「いま感染が広がるデルタ株は感染力が強く、飲食に絞った対策にほぼ効果はありません」
久住医師によると、デルタ株はマスクをした状態で短時間の接触でも感染の可能性があるという。人流が抑制できれば感染者減につながるが、人出が減らない限り飲食店を抑えても効果は薄い。事実、東京で確認される新規感染者が1千人を超えた7月14日、感染経路が「会食」である割合はわずか1.9%で、6割強が経路不明だった。
「保健所が相変わらず続けている濃厚接触者調査ではマスクを外した会食の有無などは詳しく聞かれる。つまり、大半の人はそういった場面以外で感染しています。アルコールや飲食を制限しても抑止効果は小さいし、時短営業も店の密度を増す可能性があって逆効果です」
さらに久住医師は、「東京はそもそも『緊急事態』ではない」とも指摘する。